静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

富野由悠季という超有機体

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野由悠季監督のトークショーへ行ってきました。待ち望んでいた生の富野由悠季を拝見できるという事で、とても期待していました。
 このトークショーは「東京国際アニメアワードフェスティバル 2014」の一環であり、場所はオープンしたてのTOHOシネマズ日本橋です。

 このトークショーの感想の前に、まず富野由悠季という人について語らせて下さい。長くなるので、2回に分けます。なので、21日のトークショーについての感想は次回に記します。

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 さて、実を言うと、自分はガンダムや各作品を通して富野由悠季という人を知った訳ではありません。富野由悠季というアニメ監督、ガンダムといったものがあるのは当然知っていたものの、あまり興味が沸かず未見のままでした。
 ではどうして深く知るようになったかというと、彼の発言を何かで目にしてからです。
苦虫を噛み潰したような顔とそのエキセントリックな発言で「なんだこのジジイは」というのが第一印象でした。
 が、その深くて重くて厳しく、でも優しさと100%の本気を込めた言葉の数々を追ってゆくうちに、すっかり虜になっていました。
(それらは「富野語録」と名称され、発言を集めた専門サイトやブログもある程です。)

 色んな事情から陰々滅々とし何もかも活力を失っていたその当時の自分にとって、彼が語ることやその姿勢は、苦くて鞭打たれるものであると同時に、救いであり生への意志の源とさえなりました。こんなに熱く深く心打つ言葉を発する人を、自分は彼以外に未だ知らない。そんな人が創るものとは一体どんなのなんだ、という次第で作品を追ってゆきました。富野作品については、今さら自分が書くまでもないでしょう。


 富野監督の経歴はよく知られた通り、実写映画の世界を志し日藝の映画学科を出たものの就職難にあい、唯一門が開いていた虫プロへ入社。日本初のTVアニメたる『鉄腕アトム』の翌年のことで、まさしく時代がスターを呼んだ…と言いたい所ですが、本人としてはアニメという当時大変下に見られていた業界に仕方なく足を入れた事に、相当の劣等感を抱いていたと言います。

 「アニメなんて本当は嫌い」という言葉は、ここから端を発する訳です。が、彼はふてくされつつも、手塚治虫や同い年の宮﨑駿を始めとする才能の塊を目の前にしながら、命がけで仕事をこなしてゆきます。その結果、『ガンダム』が生まれ、日本を代表し世界へ影響を与えるアニメ作家となったわけです。

 一方、その成功とは裏腹に、『ガンダム』という全ての意味で巨大なものに呪われ、極度の鬱病にかかり自殺の一歩手前であった時期もあったといいます。それでも仕事を続け精神的にもカムバックを果たし、72歳になる現在に至るまで第一線を走る作品を作り続けています。本人の発言にもありますが、死ぬまで仕事し続けてゆくのでしょう。かつての経験や成功に慢心する事無く、もっともっと凄いものを作るんだ、という意志で溢れており、その姿勢がまた後進への模範となっています。

皆さん方が、自分についてどんな才能や個性や認識を持っているか知りませんが、そんなものは使い物にならないから捨てろ。
その代わり、あなた達が今こうやって間違いなく厳然として生きているんだから、その生きた目線で観て今時代というのはこうでこうで…と多視点から考察し「だから自分はこんな作品をつくりたいんだ!」というバックしてくるフィルターにしなさい。
フィルターを通した瞬間に、どんなに無個性にしようとしても、個性はいやでも出てくる。
‘我’というのは、とっても激しくてとっても強烈なものなんです。

これはアニメクリエイター向けの講演会で話された一節ですが、何かを成し遂げたいという思いを抱いている人全てへの進言でもあります。

 話がちょっとズレてしまうかもしれませんが、いわゆる意識高い系といわれ起業などをしているまたは目指す若者の前で講演すべき人は、このような事をハッキリ言ってくれる人が必要なのでは無いでしょうか。
「自分は頭が良い。自分には才能がある。だから、これからの未来は俺こそが作る」と意気込む若者の前で講演する人は、堀江貴文勝間和代のような人ばかりでは足りません。誤解無きよう書きますが、これは例示した2人への批判ではない。ただ、彼らはマーケティング戦略や成功法などは伝授してくれるでしょうが、それは時に、視野狭窄がちになってしまう気がします。自分というのを再考察させ、それが社会に対する影響すなわち公共性について語る人がもっと必要ではないのか。ましてや、それが起業といった公へ強く影響を及ぼす可能性を持った人々の前であれば尚更です。

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 と、こんな事ばかり書いていると聖人君子のようなイメージを持ってしまいますが、本人のキャラクターはまた物凄く強烈です。躁鬱激しそうな顔をして、超過激なことを口にしたり、でもユーモラスに満ち、なぜかオネエ口調がちであったりと、非常に面白い人でもあるのです。そして、それがまた彼の魅力の1つです。

(動画サイトに富野監督の動画が上がっているので、一度ご覧になる事をお勧めします)

 そんな富野由悠季という人は、生の場で観るたらどんな人でどんな事を話したのか。
 Part2へ続きます。

 アニメの未来について.富野由悠季トークショー感想 - 静夏堂

富野由悠季

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