静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

『LIFE!』映画感想〆ネタバレ有

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 ベン・スティラー監督・主演『LIFE!』を観たので感想を記しておきます。
ネタバレ含みますので、未見の方はご注意を。

 

                  

「LIFE誌の写真管理部で働く、真面目だが空想癖があり女性に対して臆病者の主人公。デジタル化によりLIFE誌の廃刊が決まり、その最終号の表紙を飾る写真のネガを提出しなくてはならない。が、見つからない。ネガを求めるため、その写真を撮った世界中を飛び回り居場所が不定の写真家探しを始める…」といった感じのあらすじ。

全体的に主人公を通して空想と現実の対比が良い感じにできてるな、と思いました。
まず、主人公には強い空想癖があります。
彼は場所時間問わず、アクション映画のヒーローになったような空想の世界に浸ってしまいます。想いを馳せる同僚の女性の前で爆破するビルから仔犬を救い出したり、嫌な上司をド派手に殴り倒したり…と。

が、写真家探しのため、グリーンランドアイスランドといった地へ出向いたら、この空想癖に歯止めがかかります。
というのも、超高層ビルが囲い込む大都会NYでは想像しえないまさしく絶景が目の前に広がり、また思いがけない体験の連続で、空想なんかする余地が無いのです。
なぜって空想を超えた世界が現実にあるから。

唯一の空想として、想いを馳せる女性が幻覚として現れるます。

それは酔っぱらいの運転手が操縦するヘリコプターに乗るかどうかの決断を迫られる場面で、幻覚の彼女は主人公の背中を押すように歌い、結果、彼はそのヘリに乗り込みます。
つまり、NYでしていたような「こうなったら良いな」という都合の良い空想ではなく、現実と直面した際に自発的になれるかどうかの応援としての空想です。

そんな幾多のスペクタルな体験をし、やっと探し当てた写真家。
彼は標高5000M以上の粉雪降るヒマラヤにてユキヒョウを撮るため、シャッターチャンスを待ち望んで居ました。
そこでネガの在処が明らかになりますが、不運にして主人公が捨ててしまっていた事が判明。
が、ここでの見所は、写真家が撮ろうとしていたユキヒョウがついに現れるのですが、彼はシャッターを押さず、ユキヒョウを恍惚とした目で眺めながら語るシーンです。
一番好きな瞬間を、カメラに邪魔されたくない。一瞬を慎重に、今を楽しむんだ」と写真家は言います。
これは写真家というプロが本来発してはいけない言葉で作家のエゴかも知れませんが、気持ちは十分に伝わって来ます。

本当にキレイなものや好きなものを目にした時、それは独り占めしたいもの。

その代わりかは分かりませんが、写真家はカメラは放ったらかして、近くでサッカーをしていた山で暮らしている子供たちと、雄大な光景をバックにして一緒に遊びます。
「個人の独占的な楽しみ」と「みんなで共有する楽しみ」という対比が感じられて印象的でした。

NYに戻ると、またそこでの現実に戻ります。
自分も同僚たちもリストラされ、会社は無情にも刷新されてゆきます。
が、目的のネガがひょんな事から見つかり、主人公は最終号の印刷ギリギリに提出。
その時、冒頭から主人公を皮肉り会社の再編を行った人事へ、今まで皆で築いて来たLIFE誌とそこで懸命に働いた自分の思いを込めた会社の標語を、捨て台詞的ではあるけどカッコよく言い放って後にします。

退職手当を貰って会社の外へ出ると、あの想いを馳せていた女性と再開し、道端の雑誌売場で最終号のLIFE誌を目にします。

その表紙に写っていたのは、ネガを真剣に扱っている姿を撮った主人公。
それを目にした彼は、ここでも空想外な現実を目にする訳です。
LIFE誌をすぐには買わず、彼女と話を続けながら次の人生へのステップへ進んでゆく、といった感じで終わります。

エンドロールも印象的で、ネガ焼きした登場人物たちが流れます。これがまた良い感じに人物の生き様を語らす画なのです。劇中通して嫌な役をつとめる再編人事も真摯な顔つきで写っており、彼も彼なりに人生を歩んでいるのだな、と感じました。

 


ちなみに、写真用品会社であるKodak社が協賛しているのですが、数年前にKodakはフィルム事業から撤退しています。
すなわち、ネガフィルムの役割は完全に終焉した訳です(中にはフィルムに拘る撮影家は多いですが)。
そういった点で、過去の産物であるネガをデジタルな映画で観る、という作品でもあると思いました。


                 


当初は他の映画を観る予定で、時間の都合上本作を観ることになったのですが、ここまで深く観られるとは思いませんでした。これも正に現実で起こる空想外な何かでしょう。
ネガ・写真家探し、という推理的な要素があるのですがそこら辺はちょい詰めが甘いなとか、後半ダレて来たなとか、ヒマラヤの果てでロサンゼルスからこんな簡単に電話届くかよ!とか突っ込みたくなる所もあるのですが、全体的に良い作品だと思いました。

ご存知の通り、実際のLIFE誌は2007年まで刊行し、20世紀中盤から後半の世界を写し撮った名グラフ雑誌です。現在は映画通りウェブ上で事業を続けています。

歴代のLIFEのカバーポスターが劇中にて使われているのですが、それがまた素晴らしい。
特に、主人公が写真家探しを決めて廊下を走りだす場面。

 

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後ろのカバーの人物はモハメド・アリジョン・レノン、宇宙飛行士といったヒーロー達というのがニクい演出です。

ちなみに、実際のLIFE誌の最終号は2007年/4/20号でカバーは以下のようです。

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JFKの銅像らしいのですが、映画と違い淡白でちょっと腰抜けしてしまいます。

が、今までのLIFE掲載写真をネットに公開したり、LIFEが選定した「世界を変えた100枚の写真」や「この1000年の最重要人物100人」といったのは非常に興味深いので、一読をお勧めします。

100 Photographs that Changed the World by LIFE - The Digital Journalist

ライフ (雑誌) - Wikipedia


最後に、LIFE誌廃刊時に出版に携わっていた人のこの映画の感想を知りたいなと思いました。

 

LIFE 100 People Who Changed the World (Life (Life Books))

LIFE 100 People Who Changed the World (Life (Life Books))