静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

ボブ・ディランによるライブという名の呪術会 #2014/03/31

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て、4年ぶり2回目のボブ・ディランによる呪術会の感想です。

まず、開演が定刻通りに、それも唐突に始まったのにまず度肝を抜かれてしまいました。というか、一瞬の動揺。観客はとりあえずディランの登場に歓声をあげる。

…2010年時は開演前に、BGMとしてジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』の朗読が流れ、恐らくステージ裏でお香がたかれておりその匂いが会場をおおっていました。
そして出囃子にヤナーチェクがかかると同時に、ディランの経歴をまとめた紹介がリアルタイムでカッコよくアナウンスされ、メンバー登場。歓声と共に、エレクトロニックなアレンジで演奏開始。
…と、今回もそんな感じで始まるのだろうと思っていたのです。


が、開演前のBGMも出囃子も無く、定刻になると照明が落とされ、メンバーが舞台に揃った途端、アコギがジャーンと渋く響き早速歌い出すディラン。

前回は舞台右手でキーボード弾きながら歌っていましたが、今回はやや左寄りに位置しボーカルに専念。時折ハーモニカとグランドピアノをピロンピロンと叩きながら歌う、といった感じでした。
「ああスタイル変えたんだ、しかも今回はアコースティックメインで」としばらくして把握しました。

そう今回はバリバリのアコースティック・ライブだったのです。

(バックにエレキはありますが、クリーンな控えめな音色)

恐らく1940,50年代アメリカのショーをディランなりに現代解釈し、また彼の音楽性のルーツ回帰期が来たのでしょう。

冒頭こそは興奮と大歓声だったのが、演奏が進むごとに観客がだんだんと落ち着いてゆくのも、もはやお馴染みの光景かと思います。
実は最近のディランの作品はあまり聴いてない、という往年のファンも多かったでしょう。
前回にも書いた通り、そんな人達にとってはかなりしんどかったかも分かりません(2階席覗いてオールスタンディングだし)。

が、そんなのお構いなしに「基本的に、自分が歌いたいから歌う」というような姿勢で倍音効きまくった唸り声をあげる。

それはまさに、呪文のごとく。

正直言って、自分もリアルタイムで認識出来た曲は5,6曲程度でした。
近年の作品にまだ馴染んでなかったというのもあり、「あの曲が生で聴ける」という期待は端から無く、現在進行形で響き渡るサウンドに集中しました。
これは新鮮な音だなぁと発見したり、それでもやはり奇妙な感じになったり。
ネットに上がっているブートを復習として聴きながらこの文章を書いているのですが、渋いコーヒーさながらジワリジワリと味が染みて来ます。

今回は二部構成なようで、途中休憩がありました。
Thank you,ちょっと休むから待っといてね」みたいことを早口に言って消えました。
これが、全編を通して最初で最後のそして唯一の歌以外の発言でした。
つまり、MCどころかメンバー紹介も無く、ただひたすら演奏し歌う。

20分ぐらいの休憩だったので、おそらくタバコを3服ぐらいしていたのでしょう(まだ喫煙者なら)。
そして後半も怒涛の勢いでやり遂げ、アンコール。

定番にして、数多くある代表曲の内から「見張塔からずっと」と「風に吹かれて」の2曲。
おそらく懐メロ需要者への彼なりのサービスでしょう。

なので、この日もっとも歓声が上がった瞬間でした。
が、これもまた一緒に歌える余地までは与えません。
何百回も歌ったであろうこれら名曲を、演奏する度に再生成してゆく。

 

ちなみに2010年時の「見張塔からずっと」はジミヘン版に近いエレクトロニックな感じでしたが、今回はオリジナルに近いアコースティックを味わえたのが良かったです。

そして「風に吹かれて」。
これは前回時に近いアレンジでした。
フォークの貴公子と謳われた60年代、彼は「50年後に、‘風に吹かれて’なんか歌いたくないね」と言いました。
そして50年経った今、「風に吹かれて」という曲名がついた歌を演奏してはいる。

しかし、当時一世を風靡したあの曲とは、メロディもアレンジも全てが別物。
参照の手がかりとなるのはその歌詞と、そして歌っている人間が同じであることのみ。

そんな感じで、2時間近くのライブと名した呪術会は終わりました。
メンバー全員が前にそろい、嘘くさい一礼をすることも無くしばらく棒立ちになって、照明が落とされ舞台から消えてゆきました。


例によって、会場を後にするお客達の顔はポカーンとしているように見えました。
もちろん自分も、夜になって強くなっていた海風に吹かれながらポカーン。
そして、呪文が頭の中をくるくる廻っている。

考えてみれば、彼の尖った鼻は魔女のようです。

やはりボブ・ディランというのは呪術師であると再確認した次第です。

 

 



♪おまけ

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会場をすぐ出てDiversityの広場には、実物大ガンダムが鎮座しています。
終演後、色とりどりにライトアップされる、(生みの親の富野由悠季曰く)このおもちゃカラーの巨大ロボットをしばらく眺めていました。
ディランもこれを見たんだろうか。だとしたら何を思ったか。
100年後にはあんたと同じく仏像的扱いをされているんだぞ、と伝えたくなりました。

以前観たポール・マッカートニー富野由悠季もそしてこのボブ・ディランも、齢70代の爺さん達です。
なぜ、彼らはこの歳になってもこれほどに活力に溢れているのか。
対して、孫にあたる年齢の自分はパワー足りてないのはでないか。

そんな自分にディランなりのエールがあります。

なにかをやるときには、体ごとのめり込むんだ
                         by  Bob Dylan

 

 ボブ・ディランという呪術師 - 静夏堂

 

先述の通り、セットリストは近年の曲や新曲が中心なので復習と耳慣れをしておいた方がよいと思います。以下、2012年の最新作『テンペスト

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