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静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

『アナと雪の女王』映画感想 〆ネタバレ有

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『アナと雪の女王』を観たので感想を記しておきます。
ネタバレ含むのと、個人的にイマイチな作品だったので、苦言が大半を占めます。

 

これをアニメでやる必要があるのか?しかも天下のディズニーが、と開始30分ぐらいから思っては、結局最後までその疑念が晴れないままでした。
というのも、魔法モノといっても基本人間ドラマだし、雪の描写や動物やマスコットキャラを動かすのも今や実写でも十分可能。

それを、「オレ達が作るとこんな綺麗なモンになるんだぞ!すごいだろ!」というディズニー側の驕りと、物語性なんか二の次にして最先端技術を見せつければ観客はそれで感動するはずだ、という甘えが垣間見えました。

そして脚本。
映画特有の間が感じられず、冒頭部分はせっかちすぎて、後半はダレてるように感じました。

まず、このアナとエルサの両親たちすなわちアレンデール王国の王と妃の無知さというか、乱暴な言い方をすれば馬鹿さ加減が癪に障って仕方なかったです。
この両親は、後の女王になる子供たちに一体どんな教育をしてきたのか。

この話の悲劇のきっかけである、少女時代のアナとエルサの夜中からの遊びを注意しないで、アナが意識不明になったと同時に「待ってました!」とばかりに登場する間抜けっぷり。
そもそもこの両親はエルサが魔法を持っている事は知っていたはずなので、日頃から娘たちに注意を勧告していればこのような悲劇は起こらなかったでしょう。

で、それへの対処法はトロールという妖精みたいな石ころ連中に救いを頼み込み、それと引き換えにエルサの魔法に関する事はアナの記憶から抹消する、という魔法モノのお約束通り。
そして話的に許せないのは、日に日に魔法の力が強くなってゆくエルサを幽閉し、理由を知らないアナと離れ離れに成長させては、両親は事故死させるというご都合主義っぷり。

王家なんだから、このような状態に陥ったら、その後の対処をもっと徹底して考えるはずです。
これが一庶民だったらまだしも、一国を担う王家の浅はかさを感じました。
そんな王国がよく今まで持ってこれたな、とも。
王家の無いアメリカってのはやっぱ帝王学とか知らんのだろうか、とかも思ってしまいました。

それと、単純な勧善懲悪な話の筋にする創り手の感覚と、受け手側である現代人の平衡感覚とのズレを感じました。
現代は、勧善懲悪で済むほど単純な世の中ではありません。
それを、「フィクションだから、アニメだから」といって、通して良いのか。

一応、悪役を演ずるハンスにも、それなりの事情があったはず。
そこら辺を少しも描かず、話の都合上悪い奴にされている。

つまり絶対的な悪が居ない。
一方的というか、理由は知らんけどとりあえず悪いこと企んだのだから制裁加えろ、という短縮的な論理は、受け手側に特にメイン層である子供たちに、有害な植え付けですらある。
ここら辺が、「世界の警察」とか自称しちゃうアメリカ特有の価値観を見ているようで不快でした。

そしてこれもまた単純な、というか予想通りなオチとして「真実の愛」で物語を閉める。

確かに、勧善懲悪や真実の愛云々は道徳的であり永遠に広まるべき考えではある。
しかし、そんな事をもう何百何中と伝えてきた天下のディズニーが、ルーチン的にここまで単純にして描いて良いものなのか。

別に、複雑にすれば良いと言いたい訳ではありません。
ただ、もうちょっと捻りを入れるというかもっと深みがある要素を含めないと、受け手や後進の創り手への良い影響にはならないと思います。

女王エルサが魔法を自在に扱えるようになってこの王国には敵だしだなぁ、と皮肉な感想を抱いて自分は見終えました。
アカデミー長編アニメ映画賞受賞作な本作ですが、個人的には絶対『風立ちぬ』がとるべきだったと思います。

ついでに言うと今年度の出品作には『まどか☆マギカ』があったのですが、魔法モノというジャンル分けで見ても、どう観てもまどマギの方が上である。
まあ、アカデミーのアニメ部門なんてディズニーの独壇場なんだから仕方ないのですけど。

最後に、良いと思った点を記します。
やはり、映像は綺麗で素晴らしいです。

人物はもうどうでも良いとして、雪や氷柱が非常に美しいし、その音響もまた良い。
あと、主人公である女の子2人が、男の力を基本的には借りず目的を達成する、というのは新鮮でした。

ただ、どうも素直に良いと思えないのは、「でもディズニーがやるのだからこれぐらい当然だよね」という期待値が高過ぎるからかもしれません。

それと『ウォルト・ディズニーの約束』を観た後に観てしまったがため、というのもあります。

『ウォルト・ディズニーの約束』映画感想#1 〆ネタバレ有り - 静夏堂

ついでに、『メリー・ポピンズ』の原作者トラバースが如く、この『アナと雪の女王』の原案元になったアンデルセンが本作を観たらどう思うのだろうか、と考えたりしました。
果たして、トラバースの様に涙するのか。
多分、アンデルセンはしないだろうな〜と勝手に妄想してしまいました。

 

あとこの映画、絶対に夏に公開すべきでした。

だってこれ観るだけで、とても涼しくなるのだから。