読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

『ホリエモンとオタキングが、カネに執着するおまえの生き方を変えてやる!』読書感想文

書は2010年~13年にかけて行われた岡田斗司夫堀江貴文両氏のトークをまとめたものです。

評価経済社会」を標榜している2人ですが、話題はそれだけに限らず、ロケット開発から原子力などのテクノロジー、アニメ制作などコンテンツ産業から人との付き合い方まで、多岐にわたっています。

この2人が語ることだけあって、先見性が極めて高く「21世紀型の生き方」の提示されています。

また堀江氏があとがきで記しているように、冒頭の章に割かれている2010年といえば今から4年前であり2011年の震災以降情況が一変しているにも関わらず、古さは無いに等しく、むしろ現実が彼らの発言と連鎖して来た部分(iPS細胞やビットコイン騒動)や、これからの日本はそうなってゆくであろう予想図が語られています。

本書のテーマである「カネに縛られない生き方」について。
「カネに縛られない生き方なんて、岡田や堀江みたいな人間だから出来る生き方だ」という意見も出そうで、それにも多少頷けるのですが、彼らが言っているのは「思考法」としてのそれでしょう。

本書で語られているような、考え方と実践次第で「カネに縛られない生き方」をする、というのは誰でも可能だと思います。

例えば、第3章 貨幣経済の限界の中で、「0円でカフェをオープンさせる」方法を提案しています。

まずコーヒー好きの人気者を呼び、その人のコネクションを使って無料で使える場所を確保し、その人気者の友達を店員としてタダで手伝って貰う。そしてお店のステータスを上げ、店員がお店に逆にお金を払い、客から得た売上をみんなで分配する、といったもの。

確かに、不可能ではありません。
多分、スターバックスあたりなら「お店にお金を払ってでも、店員になりたい」という人を集めることは簡単でしょう。

ただ難しいのは、まだそういった認識が広まっていない事と、ステータスをどうやって上げるかといった事でしょうか。

そこで社会システムをまず変えなければならない、と両氏は言うのです。


多分これからの日本は、この2人が語っているように評価経済的な社会になってゆくでしょう。

もっと言えば、「コミュニティとコネクションが強まる社会」かも知れません。

つまり、スキルからコミュニケーション能力まで各自の「能力性」が強く求められる世の中です。

一見すると、競争的で弱肉強食な世界にみえます。

そうだと、今までのキャピタリズム社会と変わりがありません。

そこで包括的な意味での「評価」を高めることを優先し、それはスキルに限らず、人柄といった感情的な要素を含みます。

「スキルはあるけど、イヤな奴」と思われてしまう人は仕事は廻ってくるでしょうが対人的な評価は下がってしまう。

一方で「使えないけど、イイ奴」の評価は基本的に上がり利が廻る、といった感じでしょう。

最も理想的なのは「スキルもあり、人格も良い」というものですが、そうなれる人はまず居ません。
だから、スキルある人は戦略として「イイ奴」指数もあげ、イイ奴だけどスキル無しな人間はその人徳を活かして何かしらの能力を高める。

こういったことは、岡田氏の著作『超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略』にまとめられています。

 

加えて、「弱いものが、さらに弱いものを助ける」世の中で無くてはなりません。

弱者や疎外者などが、「自分より下の人間を見つけては叩き、嘲笑う」といったものは、人間の性質かも知れませんが、いい加減卒業せねばなりません。

逆に、強者はその立場に甘んじず、強者なりに手を差し伸べる意識が必要なのです。

両氏の見解は、性善説的な見解で占められています。
現状の限界に対しどうやって落とし所を見つけるか、つまりどう改善してゆけば良い方向に進むだろうかという姿勢なので、ポジティブな見方になるのは当然といえます。
そこで評価で物事を廻すための、いち戦略として「いいひと」があり、コネクションを広げ、注目を集め、何かやりたい事を達成させる。

ただ、この評価経済社会が上手くフィットするかどうかの疑問点として、まず浮かぶのは「評価を求めすぎるが為に、無理する人が増えてしまうのではないか」という事です。

日本人は、「空気を読む」という特有の性質を持っています。
それが息苦しいと言われて久しいのですが、そこからさらに評価を得るために「いいひと」を演じるというのは、まだまだ荷が重すぎるのではないか。


話が少し逸れますが、「空気を読むな、出る杭になれ」という主張をする人々(特に新興事業者など)がこの頃目立ちます。

が、影響力ある人間が闇雲にそう叫ぶのは如何なものか、と疑念を抱いてしまいます。
というのも、そういった発言は簡単にいうと「自由にやれ、周りは気にするな」といったものです。

以前も記しましたが、そこには責任と自律が伴わなければなりません。

だから、「出る杭になれ、ただし責任と自律が必要だよ」と付け加える必要があります。

だが、そういった事まで言明している人は少ない。

「君たちは何でも出来るんだよ、だから何でも自由にやって良いんだよ」と簡単に口にする大人のことを、自分は基本的に信用しないし、公共性を考えると危険ですらあると思います。

そんな事を真に受けてしまった場合、エゴ丸出しな行動を良しとした勘違いを起こし、また自ら律しないと悪知恵豊富の大人たちに良いように使われたり、逆に自縄自縛に陥ってしまう可能性が強いからです。

だから、「出る杭になる」人間を製造させる前に、「空気を読めなくても咎められない、出る杭は打たれない」世の中にするためのアナウンス、すなわち社会的システムのプロセスを示すのがまず先でしょう。

(この「空気を読む」については、また改めて記します)

本書について戻りますと、冒頭に記したように、これからの日本はどうなるのか、そこでどう生きてゆけば良いのか、と日々考えている人にとっては膝を打つ良い参考書になると思います。
上から目線なタイトルから、一見貨幣経済否定のように捉えてしまうかも知れませんが、そうではなく、その限界と問題(例えば、貨幣経済社会は格差が固定しやすい)などを見据えた上でお金に縛られない、つまりお金のみを選択肢の1つとしない生き方の提案です。
ロケット開発やFREEexなど2人が実際に行っているのは、具体例であると参考にしつつ、各々のやり方を模索するのが、読了後の次へのステップでしょう。

 

刊行記念イベントの感想は↓

「ホリエモンとオタキングが、カネに執着するおまえの生き方を変えてやる!」刊行記念会感想 #2014/06/02 - 静夏堂