静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

『GODZILLA ゴジラ』&『ハンナ・アーレント』映画感想文

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画の感想文をいくつか書いて来ましたが、1本ずつ詳細に記すのにややバテ気味なので、しばらくは2,3本フラットにまとめて上げてゆきたいと思います。

また新作旧作は問わず、自分が直近に観た作品の忘却録とします。

では、目下劇場公開中の『GODZILLA ゴジラ』と、名画座にてやっとこさ観ることが出来た『ハンナ・アーレント』の感想文を。

以下強いネタバレは無いと思いますが、未見の方はご注意を。

 

GODZILLA ゴジラ

予告編でピークな映画でした。
つまり、期待した程の出来では無い。
自分は特別ゴジラ好きという訳ではなく、往年のファンのようなマニアックな見方は出来ませんが、どうしようもなく安っぽさと幼稚さが漂って来ました。

簡単に言ってしまうと、アメリカ人によるアメリカ人のための映画。

「デカいのはとりあえず正義」という単純な勧善懲悪といった例のマッチョイズムです。

自分としては最新トップ技術によるゴジラのあの鳴き声と、街をぶっ壊しまくってくれれば良かったのですが、どうも物足りなかった。

監督がゴジラマニアらしいのですが、そこら辺の小細工なんてどうでも良く、アメリカ映画特有の取って付けた安っぽいストーリーに辟易。

でもそうしないと桁違いに金かけた映画なんて、アメリカでは出来ないのでしょうね。

ただやはり音響技術はさすがで、ゴジラの足音が映画館全体に響いては椅子に震動が渡ったほどでした。

ちなみに、続編作る気満々な終わり方です。

というか既に企画中でしょう。

GODZILLA ゴジラ[2014] Blu-ray2枚組
 

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ハンナ・アーレント

想定通り、実によく出来た映画。
学校の歴史の授業あたりで視聴させるべきレベルです。

アーレントについては以前にも記しましたので、ご一読くださればと思います。

『ハンナ・アーレント』読書感想文 - 静夏堂

 

内容としては、アドルフ・アイヒマン裁判時のアーレントを中心に据えたものなのですが、アメリカでの充実した彼女の日常生活もしっかり描いています。

個人的な見所としては、アイヒマン裁判の実際の映像を上手く貼り合わされているのと、それを傍聴するアーレントの眼差しです。

迫害者された1人のユダヤ人として、アイヒマンという「個人」と「歴史」を裁くことに対する、複雑な心境。

けれども冷静にそしてしっかり事実を見抜くのだ、という意志が込められた眼差し。

愛すべき夫や友人との触れ合いでみられる、彼女のキラキラした眼とのコントラストが上手く描かれていました。

そして、脅迫状まで送られてくるほど、彼女の思想活動史上最もセンセーションを起こしたアイヒマン裁判の報告書への大批判に対するアーレントの、屈しない態度。

公に出すこと、それが影響を及ぼすこと、それに責任を持つこと。

本ブログでも再三記していますが、総自己発信時代となった今、強く考えねばならない事柄です。

全てを敵にまわしてでも、親しい人々とも断絶してしまったとしても、自分の信念を貫くこと。

これが出来るのは強い人間です。

そしてアーレントはそんな人であった。

本作では彼女の史実通り、愛と思考を武器に闘う人間、といった部分がしっかりと描かれていました。

 

ヨーロッパ映画特有の色合いが全体的にあって非常に美しいです。

また、喫煙シーンが『風立ちぬ』並に多く、1960年代といった時代に嘘をつかずに描かれているのも評価に値します。

愛煙家であったアーレントですが、彼女の登場シーンの7割ぐらいは煙草を吹かしています。

談笑中も議論中も執筆中も、ひいては大学での講義中でも。

これが実に粋な吸い方で、当時の大部分の知識人がそうしていたように、煙をくもらせながら思索に耽っている。

つまり演出の小道具として強力なのです。

同じ時代を舞台にした『ウォルト・ディズニーの約束』の感想でも指摘しましたが、アメリカ映画界は喫煙シーンに対して見直し、またこれらの作品から見習うべきです。

『ウォルト・ディズニーの約束』映画感想#1 〆ネタバレ有り - 静夏堂

ちなみに、ヒトラー嫌煙家でナチスは喫煙の有害性のプロパガンダを広めました。

なので昨今の喫煙事情に対し「嫌煙ファシズム」と呼ばれている訳ですが、本作の執拗な喫煙シーンはそれに対する反抗的な要素を込めたのかな、と裏読みしてしまいました。

 

惜しい点は、回想部分が尺足らずなところ。
アーレントに強い影響を与えた20世紀最大級の哲学者たるハイデガーの下で学ぶも、やがて男女の関係が深まる、という有名な逸話をどうしても絡めたかったのでしょうが、やはり物足りない。

この若きアーレントを演じる女優が非常に綺麗なのもありますが、学生時代を中心とした映画を新たに作って欲しいものです。

あと、エンディング曲が暗すぎる、というかもっと音を足したくなりました。

アーレントがタイプライターを勇ましく叩いていた音やライターの着火音や煙草を吹かす音、そしてアイヒマン裁判やアーレントの講義の実際の音声などを乗せた曲にすれば、もっと余韻が響いたはず。

 

最後に、パレスチナ情勢は相変わらずキナ臭く、今現在もイスラエルイスラム組織ハマスが衝突中です。

そんな連綿と続く負の連鎖を、改めて考えるための一助を担う作品だと思いました。

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