静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

『ルーシー/Lucy』映画感想文〆ネタバレ有

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ュック・ベッソンの新作『ルーシー』を観ました。

中々面白かったです。

久々にヴァイオレンスSFが観られたな、というか。

以下、ネタバレ有りの感想文。

 

話としては、台湾に遊びに来ていた米人女性ルーシー(スカーレット・ヨハンソン)が、マフィアによって不可抗力的に劇薬を体内に仕込まれるも、それが体内で破裂し全身に行き渡り結果、彼女は超人化。並行的に「人類の頭脳は10%しか使われていなく、これが進化していったらどうなるか?」という講義をしている人類進化学者の権威教授(モーガン・フリーマン)。そんな頭脳をすでに超えたルーシーは、全ての情報を瞬時に把握し、また量子物理学的に電波も空間も操れるようになって、その教授とすぐさまコンタクトを取り、自分の行く末を知る為、その教授が居るパリへ。劇薬を取り戻すのと復讐のためマフィアはルーシーを追ってドンパチ交えながらも、彼女は教授ら研究者が集まる元へ到着。劇薬を全て摂取し、頭脳が100%になった彼女は……といった話。

テーマ的には、「知能と好奇心と伝達」の作品かなと思います。

ルーシー、というのは周知の通り、300万年程前に存在したアウストラロピテクスで人類最初の祖先、とされている女性です(諸説ありますが)。

人間の「知」の始まりの象徴として劇中でも冒頭から登場しています。

 

そんなルーシー登場からホモ・サピエンスたる我々現代人になるまで人類は進化を遂げましたが、劇中によると人間の頭脳はまだ10%しか使われていない。

で、それを超えていったらどうなるか?

 

先述したように、主人公ルーシーは劇薬を摂取しその10%を超えて超人化します。

20%を超えたあたりから、言語を始め全ての情報を一瞬で把握し操れるようになります。

と同時に、失うものもあります。

それは感情、すなわち無感情になるのです。

頭脳明晰だったり天才といわれる人は大概、「無感情」という印象を周囲に抱かせます。

しかしこの場合の「無感情」とは冷酷とか無慈悲いったのでは無く、本人にとっては残酷なほど自然なものなのです。

なので、周りから「相手の気持ちが分からない無神経な人」と言われても、何でそう思われているのかが理解出来ない。

風立ちぬ』の堀越二郎が典型的です。

彼は一貫して感情を表に出しません。

妹に「冷たい人」と言われようが、上司や軍部関係者にガミガミ言われようが、心ここにあらずで右から左へ流しているだけ。

例外として、飛行機の試験運行失敗時に歯を食いしばるのと、ラストの回想というか夢想の中で菜穂子に「生きて」と告げられて「ありがとう」と声を震わせて口にするぐらい。

ついでに書きますとこのラスト、信じられないことに、残骸と化した零戦を丘(おそらく煉獄)から「あぁ…無残な形になってしまったなぁ…負けたなぁ…」と他人事のようにぼんやり眺めており、先の菜穂子の姿も二郎の一方的な都合の良い解釈で、憧れの人カプローニと再開しては美味いワインでも呑みにゆこう、で終わる。

天才の無感情さの描写、ここに極まれりです。

ルーシー』に話を戻しますと、主人公ルーシーは頭脳が飛躍的に高まるにつれ無感情どころか、人を人として扱わなくなり邪魔な者は簡単に殺傷し、目的だけに突き進みます。

その目的とは、進化生物学者の教授の元に「超人化した自分」をサンプルとして提供すること。

提供、すなわち「伝達」です。

伝達、というのは生物が生物たる証であり役目です。

 

マフィアが追ってくる中、世界一流の学者達が集まる部屋に辿り着き、頭脳を100%にするため、例の劇薬を全て摂取します。

結果ルーシーは、時空をも超える事が出来て、太古まで遡る。

そこで様々なかつての景色を目にする訳ですが、超人化してはじめての笑みが、すなわち感情が表に溢れるのです。

このシーン、絶妙な演出なので気付きにくいのですが、非常に良かったです。

そして本物の「ルーシー」と出会い指を合わせて、現代に戻るのですが、人間の形はもはや維持できずアメーバのようになって、コンピューターに絡みつき、全てを集約したデータチップを教授に手渡して終わります。

 

人類がここまで進化した理由は、この「伝達」の高さと、「好奇心」ゆえです。

好奇心が満たされると、それを誰かに伝えたくなります。

その辺りが、上手く描かれた作品だと思いました。

物語の構成要素として、ベッソンお得意のヴァイオレンスとドンパチがあってそれもまあ面白かったのですが、話の辻褄合わせ的にしている所も見受けられます。

マフィアのボスは両手をナイフ刺しにしてないでさっさと殺しとけよ、と突っ込みたくなります。助演役の刑事がラストに撃ち倒す見せ場の悪役として、残しておいたのでしょうが。

パリの街並みを車で暴走する場面も、痛快だったりするのですが、ハリウッド映画みたいに露骨でなく、凱旋門をお上品にぶっ壊して欲しい所。

あと、フランス映画のくせに台詞の大半が英語だったのが残念でした。

最後に付け加えると、『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希が好きだったり憧れた人は、絶対観るべきです。

ベッソンが『ハルヒ』を観たのかどうか知りませんが、ルーシーが超高速でプログラミン処理したり空間を操ったり無感情からの好奇心の現れとか、長門有希を実写的に表現するとこうなるんだろうな、と思いました(まあ長門はこんなに眼光炯々としていませんが)。

 

あと、アウストラロピテクスルーシー」の名付け元になったのは、ビートルズの楽曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」からですが、さらにこの曲自体の名前元になったのがジョン・レノンの息子ジュリアンの友達の「ルーシー」からです。

ビートルズの楽曲タイトルだけでなく、半永久的に歴史に刻まれた名称元になったジュリアンの友達ルーシーは、どんな心境でどんな人なのだろう、と以前から思いを巡らせていました。

で今50代なんだろうなぁ、と調べてみたら、2009年に亡くなられていたようです。

Lucy O'Donnell Vodden (1963 - 2009) - Find A Grave Memorial

ひょんな好奇心から今こうやって調べ文章として伝達していることに、不思議な心境になってしまいました。

それとこの映画のタイトル、「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・キュリオシティ」でも良いと思います。長いけど。

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