静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

北野映画全レビュー1.初期編(1989~93年)

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の映画監督の作品を全て観た、というのは今のところ北野武のみです。
自分が北野作品に触れ始めたのは年甲斐もなく12,3歳の頃で、トラウマを覚えながらも拳銃とドンパチが好きになったり映画というものの面白さを知ったりしました。それから10年を経た今、自分は北野映画のどこに惹かれているのかと色々考えていました。既に大量な批評がありますが、とりあえず全16作品の私感レビューを記したいと思います。

長くなるので、初期、中期、後期、現代と4作品ずつ分けて記します。

今回は、その男、凶暴につき『3−4x10月』あの夏、いちばん静かな海。』ソナチネ

例によってネタバレ要素多少含みますので、未見の方はご考慮を。

発表年代順に書いてゆきます。

 

その男、凶暴につき』 1989年

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処女作にはその作家の全てが込められている、とよく言われますが正しくな作品。公開時はバブルでその恩恵に乗ったのか、桑田佳祐小田和正島田紳助や果てはガッツ石松まで映画を作った所謂「異業種監督ブーム」。当然ながら、その中で成功し映画史に名を刻まれるほどになったのは北野武ただ一人。

で、本作ですが、異常なまでに暗いです。『キッズ・リターン』までの初期北野作品は基本的に主人公が皆死ぬので影が全体的に漂っているのですが、これは飛び抜けている。元々は深作欣二が監督するはずが、都合上北野に変わりました。なのでヴァイオレンス映画になるのは予定通りだったのでしょうが、多分あの深作が監督していたとしてもここまで暗くはならなかったと思います。

なぜここまで暗いのか。先の通り、バブルでイケイケに浮かれていた日本社会への批判と、お笑い芸人という立場の対極として過剰なヴァイオレンスを取った、というのが推測できます。が、そこら辺を念頭に置いても、暗すぎる、陰鬱すぎる。

おそらく、その後の作品に観られるコメディ性が皆無だからだと思います。思い出せる限りでは、妹が連れ込んだ男を階段から蹴っ飛ばしバス停でも殴るシーンが唯一コント的な描写かと。

そこら辺からして、本作はあまり好きでは無いです。映画の文法破りな創り方には度肝を抜かれはしますが。憂鬱な時に観てしまうとさらに鬱になってしまうので、注意が必要です。『この映画、陰鬱につき』と題名を変えても良いぐらい。

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『3−4x10月』 1990年

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前作への反動か、たけし軍団渡嘉敷勝男をキャストに置き、笑いが随所にあります。が、前作とは多少違ったニュアンスで特殊な影があり、初めて観た時はトラウマとなったのを覚えています。

この作品を特徴付ける点として、エンディング曲どころか劇伴が一切ない、というのが挙げられます。もはやサイレント映画の領域。結果、銃声が極めて印象的に響く。

北野映画=「静かなるヴァイオレンス」と形容されますが、本作が一番暴力的で生々しく異常なまでの静けさが感じられると思います。また夏の沖縄を舞台にしたのは、その後の作品に見られる「夏と海」に繋がります。

監督本人が言及しているように「出来損ないだけど、どこか憎めない子供」な作品で、今となれば結構好きだったりします。

3-4x10月 [DVD]

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あの夏、いちばん静かな海。』 1991年

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多分、自分が一番好きな北野映画かも知れません。ビートルズのアルバムさながら、その時々で変わってしまうので暫定的ではありますが、現時点ではそうです。

久石譲が本作で初めて起用されています。ここら辺もやはり前作への反動か。しかし、主人公は耳が聞こえない恋人2人でサイレント性をある種、極地まで置いたと言えます。

で、本作に惹かれる点はどこかというとまず、「ひとつのモノしか眼中になくなる」人物を描いた作品だから、というのがあります。

本作で言えば、主人公茂はある日欠けたサーフボードを見付けたのをきっかけにサーフィンを初めては、のめり込みます。恋人で同じく聾者である貴子は、サーフィンに打ち込む茂に献身に付き合っては、その姿を見つめ続けている。つまり、貴子もまた恋人以外「眼中にない」。サーフィンに打ち込みすぎ貴子に素っ気なくなってしまった茂に対し拗ねて涙を流す描写も素晴らしいです。(ちなみに、この貴子役を演じた大島弘子という女優は、本作が唯一の映画出演作でその後引退したらしいのですが、主演に選ばれた理由はこの人の耳が大きいからだと個人的に思っています)

次に、主人公の周りの連中が、非常に良い奴らばかりという点。本当に自然な形で茂らと接する仲間たち。たとえば、仕事場の上司もイジる2人組もサーファー仲間もみんな茂らが耳が聞こえないのを知っているのに、自然に声を投げかける。仕事をサボった茂に対し上司が怒鳴ったりもする。これは、障害者であろうがなかろうが「均等に扱う」というのを象徴しており、北野武その人の姿勢が垣間見えます。

そして何より、久石譲の劇伴が本当に好きです。主題曲の『Silent Love』を何回聴いたか分かりません。現在の久石譲は生音メインばかりですが、個人的にはシンセサイザーを駆使していたこの頃の作品がとても好きです。

残念なのは、無理やり茂を死なせたラストシーンです。しっくり来ないなぁ、とどうしても思っちゃうのですが、構成上仕方ないのかなと最近は思ったりもします。もしくは「熱中することは死をも厭わない」描写と取れたりもするというか。

それと、サーフィンを題材としている点で、前年公開の桑田佳祐が監督した『稲村ジェーン』への対抗映画でしょう。当然ながら、本作の圧勝というのは言うまでもありません。

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ソナチネ』 1993年

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本人も認めているように、一番の代表作でしょう。本作をきっかけに国際評価され「21世紀に残したい映画100本」に選出されたというのは周知の通り。言わずもがな、完成度芸術性がトップクラス。

それ故、天邪鬼な自分は本作を口にするのが恥ずかしかったり、これと数本だけ観て「ソナチネはすごい!最高傑作!」と言ってしまう人がいたら「コイツはまだ北野映画を分かってねえなぁ」と下に見ちゃったりしてしまいます…(イヤな奴)。

さて、この映画がここまで評価されているのは、単純にキレイだからだと思います。同じ沖縄を舞台にした先の『3-4』と違い、生臭さが少ない。ヴァイオレンスシーンですら、映画的美しさが感じられます。

ソナチネ [DVD]

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後にキタノブルーと形容される色彩が突起しだした作品で、ホテルのバーでカクテルを口にしてるような感じがします(まだそんな体験したことありませんが)。

 

北野映画全レビュー。