静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

北野映画全レビュー3.後期編(2001~05年)

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野映画全レビューその3です。

『BROTHER』,『Dolls』,『座頭市』,『TAKESHIS’の4つです。

その1と2は↓を


北野映画全レビュー1.初期編(1989~93年) - 静夏堂


北野映画全レビュー2.中期編(1995~99年) - 静夏堂

『BROTHER』 2001年

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初の日英米共作映画。ヤクザとマフィアの対比が上手く描けていると思います。ただ、「欧米に日本特有のヤクザ世界をちゃんと紹介します」的な意図が見え隠れしてしまうのが残念。

ヤクザが致し方なくアメリカに向かい、そこで自分たちの城を築くも、そこでの裏の支配人であるマフィアとぶつかり合う。同業種ではあるが、決して相容れない2つの世界。

で、最終的にヤクザ側は完全敗北します。

その点から、個人的に北野流「日米決戦」を描いた作品かなと思っています。

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Dolls』 2002年

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『あの夏~』に続く、「それ以外眼中になくなる者たち」を描いた2作目だと思います。

別々の世界に生きる3組の物語を交叉させた作品で、1組は周囲から逃げるように放浪する恋人2人。もう2組は、人気絶頂のアイドルとそれを熱狂的にだけど純粋におっかけをする男。最後に、若い時に初心に交際していたものの極道の世界に入ってから数十年後、親分まで登り詰めた頃、ふと当時の恋人を思い出しかつて集っていた公園にゆくと未だ彼(親分)を待ち続けている年老いた恋人が…。

この3組とも、どちらか一方は「それ以外眼中に無い」人物たちなのです。

最初の1組は、自殺を図った後遺症で記憶喪失になり知能障害にまで陥った恋人に対し、その原因となった償いとして彼女に献身的にしかし当てもない旅を続ける男。メインを張るこの2人に限って言えば、どちらも「それ以外眼中に無い」人物なんですね。

女は記憶も知能も全て失うも、駄菓子屋に売ってるおもちゃに夢中になって遊び、大型トラックの装飾ランプをぼぉーと恍惚と眺めたり、お祭にゆくとあの独特な雰囲気にのまれて悪夢を見て泣きじゃくったり…つまり完全に子供化しているのです。概して、子供というのは1つの事にしか夢中に無くなり、極度に怖がります。そんな状態になった恋人を、贖罪と愛が絡んだ複雑な思いを持って付き合う男。

2組目の、アイドルとその熱狂的おっかけ男。アイドルが事故に合い致命的な怪我を顔に負った事で、引退し人気を避けて生活します。当然ながら、訪ねて来るファンとは一切触れ合わない。そんな状況を知った熱狂的なおっかけ男は、そのアイドルの写真を目に焼き付けた後、自ら目を傷付け失明させます。その事を知ったアイドルは、彼に会い話をする訳ですが…。

このパートに関しては、谷崎潤一郎の『春琴抄』の北野版と言って良いでしょう。

最後の、ヤクザの親分と若き頃からそのヤクザになる前の親分を数十年前に別れた公園のベンチで待ち続けているおばさんの話。親分が余生を送り出してようやっと彼女の事を思い出し、その公園にゆき再開する訳ですが、おばさんは親分の事を当時の彼と認識していない。その事を打ち明けない(打ち明けられない)親分の葛藤。何度か会うごとに、おばさんは親分に「もう来ないのかも知れないけどね」といった事を言って、彼に渡すお弁当を親分にあげます。叶わなかった約束が実際にはやっと叶ったと言えますが、認識としては決して分かり合えない切なさ。

この作品の主人公たち、深キョン演ずるアイドル以外、みんな死にます。だから「一番暴力的な映画」と北野は語ってます。が、ある種、みんな幸福な死に方をしたんじゃないかなと自分は思います。だって、複雑だけどそれぞれの願いが叶って死ねたのだから。

また、どれも共通しているのが痛いほどの「純粋性」です。巷で流布されているような「純愛」という歯が浮くようなものでは決して無い。「1つの事に打ち込む、夢中になる」というのは極めて純粋な事であると同時に、本人周囲とも残酷でヒリヒリとした痛さを持つものだったりするのです。

またキタノブルーからの脱却なのか、赤をメインにした色彩豊かさがあり、久石譲が携わった今のところ最後という点から、転換的作品だと思います。

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座頭市』 2003年

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ヴェネチアで銀獅子賞を受賞したのをはじめ、北野映画史上最も多くの賞を取り、かつ最大の収益を得た作品。この事からも分かる通り、徹底したエンターテイメント映画です。この映画のお陰で、今までの赤字が取り戻せたとか。

エンターテイメント映画=大衆芸能と記した通り、それ以前の北野作品とはいわゆる「純粋芸術」的な映画だったのだな、と気付きます(どちらが良いかとかで無く)。これは大衆芸能の極みといえるお笑い芸人の立場からの反動として、そっちの方向へ向かわざるを得なかったからだと思います。普通そんな立場の人間が、妙に芸術寄りなことをしてしまうと馬脚が露わになって変な方向に行って失敗するものですが、それを乗り越えたのはやはり彼の天才性故です。

さて、本作ですが、やはり誰が観ても面白い作りになっている。なぜなら、勧善懲悪ものだから。元手である勝新太郎座頭市シリーズを、北野なりの撮り方で作る。殺陣が最高にカッコ良く今までのどんなドンパチよりスカッとする、そしてエンディングのタップダンス。繰り返しますが、1から10までエンターテイメント作品。これもやはり過去への反動、つまり今まで芸術映画を撮っていた事への反動かと思います。

ちなみに、この作品から音楽が久石譲に代わり、ムーンライダーズ鈴木慶一が担当しています。

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TAKESHIS’』 2005年

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『みんな~やってるか!』に引き続き、キタニスト以外観なくて良い作品その2。

エンタメの限りを尽くした前作への反動でしょう。この人は、周りにも自分に対してもどんだけ反抗的なんだ!と思ってしまうほど。だからこそ、あそこまでの地位を獲得したと言えるのですが。

簡単に言ってしまうと、「分かる人だけ分かって貰えば良い」的な映画で、この姿勢は表現を売りにする人間にとって決して褒められたものではありません。ですが、ここまでやってきた人なのだから、数本ぐらいは許容されても良いでしょう。訳がわからない前衛的でムチャクチャなモノを観たい人にはオススメ。

 

TAKESHIS' [DVD]

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次回で一応の終わりです。

 

北野映画全レビュー