静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

北野映画全レビュー4.現在編(2007~12年)

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野映画全レビュー、ラストです。

監督・ばんざい!』『素晴らしき休日』『アキレスと亀』『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』の現段階の最新作までです。

 

監督・ばんざい!』 2007年

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キタニスト以外観なくて良い映画、3本目。したがって、『みんな〜やってるか!』『TAKESHIS'』そして本作は基本的に観なくて良いです。あとは全部観ましょう。

暴力映画を封印した主人公タケシ監督が、様々なジャンルの映画に挑戦するもどれも上手くいかない、といった内容。小津など往年の名作品へのリスペクト小作が随所に出て来るのですが、いかんせん構成がダレておりシンドくて、あくびが出ます。監督曰く「世界評価とは裏腹に国内での評価が低く、これと『TAKESHIS'』は気分が最低の時に作った」とのこと。

 

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『素晴らしき休日』 2007年

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世界中の映画監督が「映画館」をテーマに3分間の短編オムニバス映画の1つ。『キッズ・リターン』を1人のおっさんが田園広がる古びた映画館で観る、というだけの中身の無い作品。出演は『キッズ〜』にも出たモロ師岡ビートたけしのみ。

完全に『ニュー・シネマ・パラダイス』のパロディです。デジタル化した今、フィルムで映画を撮った最後の世代としての意識込めたのかなぁとか思いましたが、別に深読みする必要は無いでしょう。

 

アキレスと亀』 2008年

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「自分には特別な才能がある!」と自己陶酔している全若者が観るべき作品。特に、美大など芸術家やデザイナーを(一応)育成する学校では、課題の1つとして授業で扱うべき。

これもある種「他のことは眼中にない」主人公を描いた作品なのですが、『あの夏〜』等とはニュアンスが違います。

金持ちの息子として生まれた主人公は幼い頃に周囲から「君は才能あるね、天才だ」とお世辞的に褒められて育っては、絵を描き続けます。しかし、大人になってその道に進むも、一向に芽が出ない。でも、描き続ける。

本作を特徴付ける点として、「死」の描写が他作より頻繁に出てかつ強調的です。ただし、それは暴力的なものでは無く、事故死など日常であり得る死。なので、主人公の周りは次々と死んでゆきます。だけど主人公は、その死に目にあっても感情を露わにすること無く、淡々と絵を描く、描いてしまう。娘が死のうが関係なし。そんな夫に献身に付き合う妻。

芸術家オブ芸術家な人間は大抵こんな人種です。なのである意味、世間に認められ無くとも作品を作り続けてしまうその姿勢は、アウトサイダー・アーティスト的です。

恐らく、北野映画史上一番現実的な作品でしょう。リアルな描写と表される他の北野映画も実は「フィクション」に過ぎないと気付かされ、題名通り逆説的となっています。で、本人は多分そこら辺も計算してます。さすが因数分解で作品作りをする元数学者志望の天才。そんな天才から見ても、さらに雲の上に居るような存在な主人公を描いた作品。

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アウトレイジ』 2010年

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久々のヴァイオレンスヤクザもの。三浦友和はじめ大物俳優などをキャストにした、分かりやすいエンターテイメント作品です。だから、本作と続編の次作は『座頭市』以来のヒットとなったのでしょう。全体的に、良くも悪くも露骨でカタルシス得られる描写とストーリー。なので、『ソナチネ』を頂点とする初期作品が好きなファンにとっては、上等なVシネマを観ているような感じになってしまい、厚みが足りないなぁと思ってしまうかも知れません。

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アウトレイジ ビヨンド』 2012年

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初の連作。非常に道徳的でコミカルな作品だと思います。「人を裏切ったり、悪いことすると、こんな目に合うんだぞバカヤロー!」と聞こえて来るような。「全員悪人」のコピー通り、ヤクザだろうが警察だろうが、勧善懲悪が通用しない世界。これらは北野映画に一貫した要素であります。

前作に引き続きキャストが豪華なせいもあるのでしょうが、役者陣が生き生きとしており、観ていて楽しいです。「ほどよい緊張感と固くならない自然な感じで演じられた」と三浦友和が語っています。個人的には、小日向文世演ずるエゴに塗れた真の黒幕マル暴刑事片岡が一番悪人で、かつ面白い。こんな奴居るよなぁ、と笑ってしまいます。で、その姿を怪訝に見つめる後輩刑事。この後輩刑事が観客的視点なのですが、これは露骨でなく絶妙な演出と撮り方で非常に良いです。

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総括

これで、一応全作感想の終わりです。スラスラと楽しく書けて、自分の中で北野映画に対するまとめと、映画とは何かと考察する一助になりました。

今まで映画感想をいくつか書いて来ましたが、「評論」のようなお硬くスカした事をしてるつもりは全くありません。あくまで「感想文」です。モノを書くということ←この記事でも記しましたが、学校で苦痛だった感想文を自発的に書くのは多少面倒だけど面白く、文章を書く良い練習題材となります。購読しているブログでは、読書中さんの読書録 本読みの貪欲が書評の参考になりますのでオススメです。

 

さて、北野映画について私見をまとめますと、画的には色彩が程よく豊かで、演出的にはウソ臭さが無くでもしっかり映画的であり、編集的には天性のセンスで切り上げ、物語は単純だけど中身が先述の通り「道徳性が高く厚みがあって、他視点から観られる」という事です。シンプル・イズ・ベストの極みで、かつ引き算と因数分解的に計算されて作られている。

日常生活で時たま「北野映画みたいだな」と思う光景があったりしてニヤけてしまい、つくづく面白いなと観返したくなる強烈な磁力があります。

 

日本で異業種出身の監督で成功しているのは、今のところ北野武のみです。以前も書きましたが、その後に劇団ひとりが続くかどうか。→『青天の霹靂』映画感想文 〆ネタバレ有

総合芸術「映画」というものを監督するというのが、いかにハードルが高いものか思い知らされます。

ただ、映画監督に限らず、もっと異業種出身で成功する表現者が居て良いはずです。「マルチな活動」とヤワに形容されるものでなく、分別された姿勢で作られ、これはこれと割り切った目線で受け入れられるような。

こと「専業至上主義・神話」を持つ日本では、見えない壁があるのでしょう。なので「出る杭」レベルじゃ足らず、それを打ち破れるハンマーになる必要があると思います。

 

↓その他、北野映画全レビュー。

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