静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

21世紀から見た、20世紀のアイコン

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                                         (アポロ8号が撮影した地球の出)

21世紀を経験してから13年経ちました。

 超当たり前のことを記しますが、ここまで混沌と混乱と狂熱に満ちた状況は、人類史上かつてありません。この感覚は、百年前も千年前も古代も、逆に百年後も千年後のこれからも変わらないもので、その時になると誰もが口にしていたし、これからもするでしょう。つまり、歴史を重ねる過程の現在進行形状況の中で人間が抱く普遍的な感覚です。

 で、この頃「20世紀とは何だったのか?」と考えたりします。それまでは「90年代とは何だったのか?」が自分の中の過去を振り返る主な年代だったのですが、先ごろ自分の中で一応の結論が出て記事にしました。「癒し」の時代の終わりとアウフヘーベン


 当然ながら、特定の年代の総意的評価が下されるにはかなりのスパンが必要です。個人的に見て、少なくとも150年は必要かなと思います。なので、13年しか経っていない前世紀の評価を下すのは、今の人類には不可能です。

 さて、いつの時代もその時代の象徴的な物事を表し後世へ伝えるものとして、最も明確で直感的に使える媒体は、視覚的なものです。歴史に名が残る美術家は、大概その辺を計算しています。現代日本で言えば村上隆で、その後の歴史教科書に彼の名前と作品が乗るのは確定的です。(この村上隆、賛否両論に巻かれている人物ですが、個人的にはかなり評価しています。それについてはまたの機会に)

 20世紀は絵画に変わって、写真映像がその主役となりました。

 そこで、自分が選ぶ「20世紀のアイコン」について記します。

 

アドルフ・ヒトラー 20世紀最大のスーパースター俳優

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 20世紀から現代に続く世界情勢を直接的に決定付けた人物の代表として、アドルフ・ヒトラーが選出できます。ある種、この世紀の集約体と言って良いほど。20世紀の人物を記した書物としては恐らく彼がトップでその事を物語っています(実際、ジュンク堂など大型書店の歴史コーナーにゆくと関連本が最も占領しており実感できます)。

 「彼の顔つきは、20世紀そのものを反映したように暗い」と三島由紀夫は記しています。が、その残された写真や動画を観てみると、現代でも十二分に「カッコいい!」と映ってしまいます。ナチ党大会などを観ると、その徹底した演出と機能美には目が眩み血が騒いでしまいます。何より、彼は演説と演技をする天才だった。つまりスーパー俳優だった訳です。頑固で生真面目で論理の塊とよく形容されるドイツ人が、その当時の絶望的状況を考慮しても、惹かれ熱狂した理由がこれで、多分他国でも同じであったと思います。

 また、自覚的にしろ無自覚的にしろ、カリスマを目指している人間や校長先生から政治家など指揮を取る人間にとって、永遠に憧れる存在でしょう。

 よく言われるように、アドルフ・ヒトラーという1人物が美大に受かってその道に進んでいたら、現代は180度違うものになっていたはず(ただ、彼には芸術的素質が欠けており本人もそれを自覚していたらしく、芸術家としては成功しなかったでしょう。ちなみに、ヒトラーが描いた絵は現在ネット等で見られ、競売にかけられたりしています。)

 政治にしろ芸能にしろどんな分野でも、時代がカリスマとスターを呼ぶのです。

 

アインシュタインノイマン ー 科学技術の2大スター

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 科学技術の世紀、20世紀。同時に、「ユダヤ人の世紀」とも言えます。その双方ともの代表者である、アルバート・アインシュタイン

 ユダヤ人には天才が異常に多いです。マルクスフロイトもレーニンもドラッカースピルバーグカフカもディランもみんなユダヤ系(なぜユダヤ系に天才が多いかは、また書きます)。

 何より、オッペンハイマーはじめマンハッタン計画に関わったメイン科学者のほとんどがユダヤ系だったということ。ドイツ第三帝国に追い出されアメリカに渡ったユダヤ人が原爆を作り、それが同盟国大日本帝国に落とされた、というのは歴史の皮肉中の皮肉でしょう。

 そのマンハッタン計画に参加し、周りの天才たちに「あいつは宇宙人か悪魔」と形容された人物、フォン・ノイマンが居ます。

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 当然ながらアインシュタインと同じアシュケナジム(ドイツ東欧系ユダヤ人)。このノイマン、20世紀のダ・ヴィンチと言って良いほどの功績を残し、ある種アインシュタイン以上に現代に影響を与えた人物なのですが、どうも知名度が足りない。バックミンスター・フラーと並んで、もっと注目されるべき天才です。

フォン・ノイマンの生涯によるとノイマンプリンストン高等研究所での先輩かつ同僚だったアインシュタインとは、どうもそりが合わなかった模様。アインシュタインが戦後反戦平和運動に尽力したのと対照的に、ノイマンは徹底的にタカ派で「ソ連にさっさと爆弾落とせ」と提言したほど。が、核実験に積極的に参加した結果、放射能を浴びて激痛に苦しみながら53歳で死にました。「天才とは何なのか」と考えた時に思い浮かぶ一番の人物です。

 ちなみに『博士の異常な愛情』のストレンジラブ博士のモデルの1人とされます。(付け加えると、この監督であるキューブリックユダヤ系です)。

 

無名の反逆者ー革命と失敗の世紀

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 20世紀は「革命と世紀」とも称されます。同時に多くの「失敗の世紀」でもありましょう。人類史上最大の犠牲者を出した2つの大戦、そして地球すらも消滅寸前まで追いやった冷戦、それがさらに戦争の元種となりまた革命となる。失われた命は数知れず、この事象自体が人類全体の失敗と言えます。が、その失敗とある種の生贄によって生まれた新たな科学と文化は、超絶的な進歩を遂げました。

 東欧革命に代表される「革命から生まれた独裁体制からの民主化への革命」の多くは、成功しました。が、失敗したのも当然ある。その代表例は六四天安門事件でしょう。失敗したので「革命」と表されず、「事件」となっています。

 その天安門事件のアイコンである通称「無名の反逆者」。これは3つの意味で20世紀を象徴しています。まず、第一次世界大戦によって登場し飛行機と並んで新兵器かつ必需兵器となった戦車。次に、革命を起こそうとした名も無き民衆の1人。そしてこの衝撃的な写真と動画が撮影され、メディアがそれを全世界に報道したこと。

 Wikipedia等で記載されてるようにこのTank Man、その後は不明なようです。撤退する戦車に対して止めようとしている事からも、謎ばかり。これほど有名でかつ隠蔽情報は山ほどあるでしょうから、いつか明らかにされるとは思うのですが。

  その後の中国内部事情および日本を始めとする国際への影響は、この事件を起点にしていると言って良いでしょう。これが「事件」でなく「革命」となっていたら、世界はどうなっていたか。

 余談ですが先日、池上彰の番組でこの天安門事件を扱っていました。テレビ朝日制作だったのですが、中国に気遣ったような隠蔽的意図的な編集をせず死亡者も数万人を超えたと推定される、と放送されており「あのテレビ朝日が」と驚きました。意向は分かりませんが、例の朝日新聞問題への表面的反省か、または現在進行形の香港デモの影響なのか。

 

ビートルズー重い荷物を背負って進む人類

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 ヒトラーが歴史の地図を書き換えた人物の集約であるように、この4人は20世紀全カルチャーの集約体と捉えて良いです。彼らが活動した1960年代に、文化芸能だけでなく現代の直系先祖にあたる物事ほぼ全てが出揃っています。なので、この60年代というのは特別に把握しておいた方が良いでしょう。

 その象徴たるビートルズ。文献は腐るほどある上、自分がまた書くとえらく長くなるので、ここでは省き詳しくは改めて書きます。とりあえず今は「20世紀後半の世界地図を書き換えた象徴」とだけ記します。

 そんな歴史の書き換えたを行った内の2人、ポール・マッカートニーリンゴ・スターは今も元気に活動し、全世界を廻っています。昨年(2013)に来日したポールの公演に自分も足を運びました。感想を一言で表すと「なんでこの70過ぎた爺さんが、オレなんかよりこんなにパワフルなんだ」という事です。リアルタイムで体験していたであろう観客が立ちっ放しに疲れて座ってしまう中、3時間一滴も何も飲まず歌い続けるポール。歌声演奏とも、衰えを全くと言って良いほど感じさせないその勢い。「まだ大麻でもやってんじゃないのか…?」と本気で思ってしまったほど。

 ビートルズの楽曲中特に好きな曲に、「Carry That Weight」があります。『アビイ・ロード』メドレーのクライマックス的曲で、その後のビートルズ自身を暗示したその歌詞。

Boy, you're gonna carry that weight
Carry that weight, a long time
Boy, your're gonna carry that weight
Carry that weight, a long time

ー君はその重荷を背負っていくんだ
 これから長い間ずっと
 君はその重荷を背負っていくんだ
 これから長い間ずっとー

 1969年に20代後半でそんな事を歌った4人は、その後まさしく「重い荷物を背負って」生きてゆくことになります。現在進行形で生きるその内の2人は、死ぬまでそれを背負い続けて活動してゆくのでしょう。

 

 我々もまた、20世紀が生み残した功罪を背負って21世紀を生きてゆかねばなりません。

 自分がいつ死ぬかなんて分かりませんが、平均寿命的にあと50年以上は生きることになります。その頃は、2060年代。どうなっているんだろうか?ひとつ確かなことは、公私とも全てが激変している。時代は常に先を要求します。

 それが進化となるか退化となるかは分かりません。が、「渡されたバトンを握りしめ自分なりにしっかり走っては、次の走者にバトンを渡さねばならない」という意識は常に抱いておきたいものです。

 

LIFE 100 Photographs that Changed the World (Life (Life Books))

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