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静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

学校に置くべきマンガ

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ンガとアニメが、最も影響力ある娯楽媒体と言えます。少子化で青年向け作品が量産されていますが、これらは基本的に子供のものです。影響力という観点からして、子供と大人では比でない。年端もいかない弟を持っているので、その強さを痛感しています。その娯楽の洗礼を受けている我々もまた、人格形成の1つとなっている事からも伺えるでしょう。

そんな親教師以上に訴求力あるマンガ。これを教育に使わないのは損では無いか、と思うことがあります。教育と娯楽作品を絡めることに違和感を覚えないでもありませんが、影響力ある表現媒体は往々にして教育に盛り込まれます。今では明治時代の文学作品を習いますが、当時の知識人は「文学は有害で若者が読むべきでは無い」と喧伝しました。ただ、これはプラトンの時代から変わりありません。

道徳の授業が機能していない中でマンガを教材として扱うのは、四番打者であり最終兵器です。多分、遠くない未来で扱われることでしょう。

そこで、静夏堂チョイスの学校に置くべきマンガ作品を選出します。中学校に置くのを前提とし、基準は「道徳性がある」のと「純粋にマンガとして面白い」です。手塚作品は置かれている事が多いのとやはり神なので別格扱いとします。

ナニワ金融道青木雄二

ナニワ金融道(1)

ナニワ金融道(1)

 

無人島で暮らさない限り、我々は社会の中で生きてゆかねばなりません。そしてこの社会とは、基本的に金融を中心に廻っています。「貨幣」というそれ自体はただの紙切れだけど、皆が共通価値として信じ込んでいる道具としてお金を使い生活しています。道具なので「金ほど汚いないものは無い」という言葉は通用しません。包丁が人殺しの道具にもなるように、使い方次第でどうにでもなります。

この『ナニワ金融道』という作品は、そんな道具を中心に起こる人間と社会を描いた話です。つまり、極めて現実的。

同時に、限りなく漫画的なマンガでもあります。周知の通り、絵もコマ割りも洗礼されておらず、何より下品。が、マンガというのは本来ポンチ絵であり、逆に調度良かったりします。むしろこの作風でないと本作はここまで面白いものには成らず、単なるお説教的なマンガで終わっていたでしょう。同じ金貸しモノに『闇金ウシジマくん』がありますが、あれはマンガ的面白味が皆無なのと猟奇性が極度に高いので頂けません。

ただし学校に置く以上、893ナンバーやセンズリ銀行や赤貝信託銀行や高級時計オメックスや喫茶店満子etc…をどう対処するか難しい所です。が、肉欲棒太郎を頂点とする天才的なネーミングセンスを知らないのは損なので、そのままで良いでしょう。青木雄二はこれらを本気で名付けてゆきました。実際、社会はそんな感じなので溢れているのだし。

 

笑ゥせぇるすまん藤子不二雄

笑ゥせぇるすまん (1) (中公文庫―コミック版)

笑ゥせぇるすまん (1) (中公文庫―コミック版)

 

これも『ナニワ金融道』と同系統な作品です。「欲望と幻想」をここまでメインとしたマンガを自分は知りません。ただ、あまりに猟奇的だったり救いの無い話は選別したい所。藤子Aにはその名も『藤子不二雄Aブラックユーモア短篇集』というのがあるので、より黒いものを見たい人はそちらを。

 

 まんが道藤子不二雄

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

 

自分はこの作品が1番好きで、恐らく最も読み返しました。

本作には全てが描かれています。夢と現実との戦い、そこから溢れ出すロマン。そして「まんが」という文化の礎を築いた者達の歴史文学でもある。先述の黒い現実を描いた作品に対して、こちらは希望に満ちたビルドゥングスロマンです。「まんがに命をかけた者達」を描いた作品ですが、様々な道を進むもの全てにとっての応援歌になります。

 

藤子・F・不二雄 SF短篇集』藤子・F・不二雄

藤子・F・不二雄少年SF短編集 (1) (小学館コロコロ文庫)

藤子・F・不二雄少年SF短編集 (1) (小学館コロコロ文庫)

 

過去と今を知ったら、未来を知る必要もあります。これらは 「すこし・ふしぎ」としてのそれで、センス・オブ・ワンダーを味わえる作品が中心です。が、十二分に純SFなものであり単なるエンタメで終わりません。自分はこれらを通して、SFの面白さと凄さを知りました。

藤子作品が自然と3つ上がりました。この2人は、どこまでも少年の目を持って世の中を描いたと言えます。余談ですが、藤子不二雄というペンネームを超えるものを自分は知りません。

マンガという世界を知り教えてくれるモノが、ここまで身近にあるのは日本だけです。そんな資源を有用に使わないのは損なこと。

内面的な意味合いでも格差が生まれるであろうこれからに必要な素養は、過去と現実を分析処理し、未来を予測する力です。

以上に挙げた作品群は、その手助けをしてくれます。

 

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