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静夏堂

個人的考えのまとめ。主に音楽や本や映画とかアートとかについて

『天才スピヴェット』映画感想文

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『天才スピヴェット』を観ました。面白かったです。自分が今年観た新作で上位に入ります。以下バレ有りの感想文。

 

 

自分は天才モノが大好きです。『アマデウス』『風立ちぬ』『ビューティフル・マインド』etc。天才への憧れとか、天才と凡人の差は何なのかとか考えさせられるからです。

が、この『天才スピヴェット』はそういったモノとは少し違いました。主人公が少年だから、というのが大きいです。

類を見ない発明品と理論を学会誌に発表するも、子供だと信じて貰えないので大人と偽り、スピヴェットが住む片田舎から授賞式が行われるワシントンDCまで1人旅する、という粗筋。つまり、成長冒険劇です。

 

「出る杭は打たれる」とはよく耳にしますが、本作を観るにアメリカでもそれは変わりないでしょう。超保守的な田舎だと比ではないはず。

スピヴェットはそんな環境で過ごし、学校のテストでは教師も理解できない高度な事を書いてしまって、赤点を付けられ笑われ者にされる。家庭は愛情に満ちているけど、誰もスピヴェットの天才性を理解しようとしない。

スピヴェットの両親の対比が非常に良いです。父親はロマン主義なカウボーイ。母親は昆虫学者。愛し合ってはいるものの、どちらも自分の世界に没頭している。スピヴェットは両親からその特性どちらも受け継いでいます。頭は母親から、心は父親から。

なので頭脳明晰だけど、周囲に気配り傷付きやすい初心な少年。こと双子の弟が銃で事故死してしまったのが、彼のトラウマであり、心象風景でその弟が良くも悪くも登場する。「好奇心は猫をも殺す」という諺がありますが、弟と銃を使って実験をしてしまったが故の事故であり、それを象徴しています。

 

貨物列車に乗り込みヒッチハイクをしてワシントンまでゆくのですが、大陸横断とはなんて壮大でロマンがあるのでしょう。広大な自然と都市のハイウェイ、どちらも美しく叙情的です。

ワシントンに着き、学会のトップに正体を明かして何とか認めさせます。すると、手のひらを返したように至れり尽くせりの待遇を受ける。ここでの小賢しい大人達の描写がまた良いです。作り笑いでスピヴェットと接しまくる。こと獲物を狙うが如くの眼の描写が凄まじく笑ってしまうほど。が、彼はその大人の建前と嘘を見抜いている。なので、終始冷め切っている。

天才子役さながらバラエティ・ショーにも出演させられるも、学会のため同じくワシントンに来ていた母親が登場。父親も同伴しており、欲望に塗れた大都会を去り家路について終わります。

以上、満足度が高い作品でした。

ただこの作品、3Dでやる必要性を大陸のスペクタクルな風景以外全く感じません。新技術には積極的に受け入れようと思っている自分ですが、3D映画だけは全く頂けない。そんなものはテーマパークで味わえれば十分。それと、ミニシアター上映なのが惜しい所。イオンシネマで全国的にやるべきです。

今年観る新作はこれで終わりなので、最後に良い作品に出会えて良かったです。